「まだそれのこってるんだ」
私の肩をゆっくりとなぞる指先は、醜い傷痕を差していた。
傷痕
「これ、いつのだっけ」
黙り込む私に対して彼女はいつも好きに喋ってる。
別に殴られようが、殺されようが構わない。
それが私の存在意義だからだ。
「ああ思い出した、初対面の時のだね」
にっこりと嬉しそうに笑うと再び傷痕に爪を立てる。・・・正直痛い。
「ねえ、痛い?苦しい?今どんな気持ち?」
恍惚とした表情でぐりぐりと傷を抉る爪を増やし、ご丁寧にも私の表情を伺った。
別にマゾでもなんでもないから、ただ痛いだけだった。
「大好きだよ、誰より大好きだよ」
反応しない私にむかってキスが降ってくる。
頬、額、瞼。
それでも傷を抉る爪は止まらない。
「好きだよ、大好きだよ」
抉る痛みが甘い痛みに変わったのは、
力をあまり入れなくなったから?
それとも、
(答えは知ってはいけないんだろう)
貴方は証ばかりくれる。
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