傷痕

TOP





「まだそれのこってるんだ」


私の肩をゆっくりとなぞる指先は、醜い傷痕を差していた。













「これ、いつのだっけ」

黙り込む私に対して彼女はいつも好きに喋ってる。

別に殴られようが、殺されようが構わない。


それが私の存在意義だからだ。



「ああ思い出した、初対面の時のだね」


にっこりと嬉しそうに笑うと再び傷痕に爪を立てる。・・・正直痛い。



「ねえ、痛い?苦しい?今どんな気持ち?」

恍惚とした表情でぐりぐりと傷を抉る爪を増やし、ご丁寧にも私の表情を伺った。


別にマゾでもなんでもないから、ただ痛いだけだった。



「大好きだよ、誰より大好きだよ」


反応しない私にむかってキスが降ってくる。

頬、額、瞼。


それでも傷を抉る爪は止まらない。


「好きだよ、大好きだよ」


抉る痛みが甘い痛みに変わったのは、



力をあまり入れなくなったから?



それとも、





(答えは知ってはいけないんだろう)


貴方は証ばかりくれる。


TOP


Copyright(c) 2010 all rights reserved.