通称、僕のあだ名は”マルコメ先輩”である。
理由は簡単、頭が坊主頭で愛嬌のあるいい顔をしているからである。
そしてもう一つ理由がある、それは・・・
マルコメ先輩
「マルコメ、テメまた俺のチュッパさんを寝取りやがったな!?」
・・・折角考え事をしていたというのに目の前のコイツは突然肩をゆすって僕を現実世界に引きずり戻した。
「はてなんのことやら」
悔しいのでしらけてみる。
「しらけてんじゃねーぞ!!俺の嫁という名のプリン味のチュッパさんパクりやがったのテメーだろうがああああああああ!」
猫のケンカのようにフーッ、フーッ!と威嚇するかのように目の前の部員は唸る。
・・・なんだか案外つまらない反応だなあ。
「あぁあのチュッパチャップスね、うん、美味しくいただきました」
「貴様ァアアア!仇を討ってくれるわああ!俺の嫁を貴様ァアアア!」
そして再び彼は地団駄を踏む。
「お前、その年にもなってチュッパチャップスを俺の嫁発言するのはちょっとやばいぞ、どことは言わないが」
言い切った直後にヤツは大きく振りかぶってノートを僕にフルスウィングしやがった。
見てから余裕でした、とでも言うかのように僕はひゅるりと身をかわす。
「テメ、避けてんじゃねーよ!」
「だって痛いじゃん」
「痛くしねーと気がすまんわ!ボケ!」
ぷんすか擬音がつきそうな勢いでずんずんとヤツは部室に歩いていく。
自然と部員達はモーゼの十戒の如く綺麗に二手に分かれる。
・・・実に愉快である。
「マルコメ、今度は何をしたんや?」
ヤツが機嫌悪く部室の更衣室に入るのを横目に見送ると、今度はポンと肩を叩かれて一つ上の先輩に声をかけられる。
「ん?特に何もしてませんよ?・・・あえて言うなら彼のトレードマークをやっつけただけで」
「・・・チュッパか」
「スライム並みに弱かったです」
「さよか」
先輩は呆れるようにして笑うと、また軽く僕の坊主頭をポンポン、と撫で付けて去っていく。
「マルコメエエエエエエエエエエエエエエエエ!テメエ俺の偏差値に何してくれやがったああああああ!」
怒声に周囲に居た部員達がぶるりと身震いし、一瞬たじろいで恐る恐る僕を見る。
・・・意外にいい表情しているな、後輩部員よ。
「何ってちょっとテストの答案用紙にサインしただけだけど?」
「テメ、何テストに描いちゃってんの!?アレなの、小学生のイタズラ小僧のノリなワケ!?」
ぴしぴし、と人差し指でテストの答案用紙に描かれたイタズラ描きを必死に指差した。
そう、僕がマルコメといわれる理由、それは
「なんで味噌汁の絵とか描いてんだよこの馬鹿野郎!!!」
「僕のサイン」
「黙れエエエエエエエエエエエ!今すぐ消せ!消せ!!!」
「ついでにテストの答案も消しとくわ」
「黙れ!」
(彼こそ非日常!)
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