「あたしが好きなのはね、」
ボクはまた始まった…と頭を少し抱えると、半ば諦めたように彼女の方を向いた。
インタビューした女性は期待に目を輝かせながらうんうん、と小さく頷く、心の中で小さく合掌しておく。
「彼の冷たいボディ、無機質なイメージにそれと違って働き始めると熱くなりはじめるそんな所が大好きなの。無口で働き者だし、文句は言わないし、たまに小さく唸る所も大好き。普段はとっても物静かな彼だけど、そんな所も受け入れられるぐらい愛してるわ!」
何よりね、と彼女は続ける。
インタビューをした女性はポカンと呆然とした表情で彼女を見つめる。
「どんなに世界中が私たちを否定したってそんなもの、敵うわけないわ!だって私たちの愛は確かなものだもの!」
どこでそんな勘違いをしたんだ、とボクは心の中で毒づく。
彼女はいつもそうだ。
こうやって彼女の好きな彼の話をさせるといつも暴走したかのように止まらない、まさに猪突猛進。
恋は盲目、とはいうけれどそんなうまい事誰が初めて言ったのだろうか、などと無駄な思考を巡らせる。
「そ、それで…彼の名前は?」
「セドリック!とっても素敵なんだから!」
高らかに彼女の”愛する彼氏”の名前を告げた。
あぁ…もうホントに彼女は馬鹿なんだから。
「が、外国の方ですか…」
「いいえ!日本よ!」
にこやかに笑顔で彼女はそう言うと愛しの彼氏を見せてあげる、と女性リポーターの手を引く。
もう駄目だろうな、うん、国民的アイドルがあんなんだなんて将来の日本が心配である。
「見て!セドリックよ!」
「あ、あの、こちらって…」
彼女はアイドル。
しかし彼女はノートパソコンを愛しているのだ。
彼女の愛する彼
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